「上等じゃねーか」
畳の間に高杉の声が響いた。
近頃なんだかの様子がおかしい、という事を二人で話していたのだ。
いつもなら来島と一緒にバカみたいにはしゃいでる、元気だけが取り柄のようなあの娘が、
最近ではすっかり塞ぎ込んでいる。
見ればいつでもうつむき加減でぼんやりしてるし、小さい頃から仲の良い兄弟のような存在の
晋助とだって、ロクに話していない。
むしろ避けているように見える。
一体どうしてしまったのかと心配になり、原因を確かめようと言っていたのだが。
「拙者がそれとなく聞いてみるでござるよ」
万斉がそう主張すれば、高杉は自分が聞くから引っ込んでろ、と言い張った。
「…大丈夫でござるか?」
「どういう意味だよ」
「なにやら悩んでるみたいだし、無理に聞き出そうとしてまた喧嘩になるんじゃ、」
「うるせぇな、俺とアイツの方が近い仲なんだから、俺が聞くのが一番良いに決まってんだろ」
「そうは言っても、晋助とは昔から、口を開けば喧嘩ばかりではござらんか」
「……」
「は頑固な娘だし、やっぱり拙者から尋ねた方が、」
「俺には言えない事を、お前にだったら言うってことかよ」
至極不機嫌そうに言った彼に、だって晋助いつも喧嘩腰だから、と返せば彼はますます不満気な
目付きになり「上等だ、」とのたまったのだ。
「何が何でも絶対ぇに、お前より早くアイツの口を割らせてやる…!」
憤る晋助に、「口を割らせる」というスタンスからして既にダメだと万斉は思ったが、口にしな
かった。
(やれやれ……本当に面倒くさい二人だ。)
【朝】
「オイ!!!」
ノックもせずにの部屋の戸を上げる高杉。
が、既にそこにの姿は無かった。
【昼】
「オイ、買い出し付き合ってやる」
「…!いいよ!晋助疲れてるでしょう」
高杉が近付けばはサッと目をそらした。
「…疲れてねーよ」
「別に一人で大丈夫だから!晋助はゆっくりしてて!ね!じゃあ行ってきまーす」
「あ、オイ!」
【夕方】
「お前、一人で大丈夫って言ったよなァ?何で万斉と一緒に戻ってくんだよ」
「これは…偶然会ったんだよ、そこで」
「本当でござるよ。帰り道バッタリ会って、スタバでお茶して帰ってきたでござる」
「…ほォ」
「ちょ、万斉さん!」
「うまかったか、キャラメルフラペチーノは」
「な、何で何飲んだかまで解るの晋助!?」
「俺はお前の事なら何でも解んだよ。だからちょっとこっち来い」
「わわわたし、御夕飯の準備があるので、失礼!!」
「あ、オイ待て!」
【夕飯】
「万斉、は?」
「食欲無いらしいでござるよ」
【風呂】
「オイ!」
「キャー!!出てけ変態!」
【…そして就寝前】
「、いい加減にしろよ…!?」
「な、何が!私疲れてるから早く部屋戻って寝たいんだけど…!」
肩に手を置いただけでビクリと跳ねたは、すかさず逃げるように高杉から距離を取る。
「…お前、俺に何か隠し事してんだろ」
「し、してない、してない」
「俺のこと避けてんだろ」
「さ、避けてない、避けてない」
目を合わさず単調に首を降るの横に、バンっと手を付く。
「ちょ…!待って!近寄るなぁぁ!」
「じゃあさっさと吐け!」
「うっ、だから……なんか最近おかしいんだよ、私」
「だから聞いてんだろうが!」
「怒鳴んないでよ!…晋助が近くにいると、なんか落ち着かないってゆうか…」
「喧嘩売ってんのか?」
「胸とか苦しくってご飯もろくに食べれないし…」
「そりゃ珍しいな」
「こうやって見られてると、うまく、喋れないし、」
「……」
「なんか気が付けばボーッとしてたりとか…」
「……」
「晋助が一晩帰んなかったりするとやたらイライラするし…昔はそんな事無かったのに」
「…お前」
「どうしよう。何か重大な病気かもしれない」
「重大な病気?…違ぇよ。それはな、アレだ」
「な、なに?もしかして…」
「ああそうだ」
がゴクリと息をのむ。
高杉は高らかに言った。
「そりゃまさしく、“夏バテ”だ!」
「ちがぁぁぁあう!!」
「キャー!!」
突然の珍入者に驚いて悲鳴を上げる。
「ば、万斉!覗き見か?いつからそこに居やがった…!」
「全くおぬしら二人は…本当にどうしようもないでござるな。本当にダメダメでござる」
「んだと?」
「殿、ちょっとこっちに」
コイコイと手招きされは万斉の側によった。
「殿、それはな、」
高杉に聞こえないようの耳元で囁くと、万斉は「では」と手を上げ背を向けた。
はピタリと固まったまま、顔を真っ赤にしている。
「オイ、待て万斉!テメー何吹き込みやがった…!?」
「なんでもござらんよ。殿、機を見て晋助に告げてみると良い」
両肩を掴み問いただす高杉に、が混乱のあまりアッパーカットをお見舞いする音が夜空に響く。
無自覚カップルがくっつくのは、まだまだ先の話。
恋の病
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相互記念(…ってかなり前の話なんですが…!)にRICOさんに捧げます^^
高杉が残念な感じですみません。 辻子
相互サイト
『LUCCA』の辻子さんから相互記念でいただきました♪
遅くなった原因は概ねわたしです(笑)。『友達以上恋人未満』という関係性が大好きです。
優しくて大人で苦労人でソフトツッコミな万斉さんも素敵です
これからもどうぞよろしくお願いしますねvvv RICO