マヨの国の王子様
とある応募葉書をポストに入れて2ヶ月強。
目的の物が,やっと手元に届きました。
待ちくたびれた分,手に入れた喜びもひとしおです。
あとは…これをあの人にお渡しするだけです!
「あっ副長!」
お渡ししに行こうとしたら,ちょうど食堂にその人が――土方さんが入って来ました。
「お前か。どうした?」
「これ,受け取ってください」
「…あ?」
煙草を咥えている土方さんに,ずいっと『それ』を差し出します(あ,でも食堂内は禁煙ですよ)。
土方さんはわたしの手から『それ』を受け取って,しげしげと眺めます。
「どうしたんだ,これ」
「マヨライターです。今,ポテチ(マヨネーズ味)のプレゼント企画が行われてて。袋についてる
マヨ王子シールを集めて送ると,マヨグッズが当たるんです」
「…ああ。それで最近やたらとポテチのマヨ味食ってたのか,お前」
「おかげで2キロも太っちゃいました」
ポテチはとっても美味しいのにあんなにも高カロリーだから曲者です。
というか,美味しいものに限ってカロリーが高いのはどうしてなんでしょう…女の子の敵です!
…それはともかく。
「本当はマヨ王子の抱き枕を狙ってたんですけど…当たらなくて」
大本命はマヨライターじゃなくて,等身大マヨ王子の抱き枕(1.6メートル)だったんです。
写真で見ただけでも,すっごく気持ち良さそうな抱き枕でした(テンピュール素材)。
副長は日々いっぱいお仕事をこなしていらっしゃるから。
快眠グッズでぐっすり眠って,日々の疲れをとって欲しかったんです。
でもさすがに『抽選3名様』の枠は厳しかったみたいです…残念。
「けど,このマヨライターも副長にぴったりだと思います。どうぞ使ってくださいね」
「おー…サンキュー」
そう言って副長はマヨライターをいそいそと胸ポケットにおしまいになりました。
口の端が嬉しそうに緩んでいます。
どうやら喜んでいただけたようです。よかった。
「でもやっぱり残念です…すっごく気持ち良さそうだったんですよ,抱き枕」
可愛らしいマヨ王子(1.6メートル)を思い出すと,つくづく残念です。
もし当たっていたら,副長にお渡しする前にわたしもモフモフしたいと思ってたのに。
「抱き枕,ねえ…」
土方さんはなぜかわたしの言葉をしみじみと繰り返しました。
そして――なにを思ったのか,わたしの手をぎゅっと掴みました。
え…えっ…えええ!?
「よし。お前が抱き枕になれや」
「は,はい?」
「よし」って一体何が良いの!?何も良くないです!
ななななにを言っているんでしょう,この人は!
頭でも打ったんでしょうか(むしろ今殴打されちゃえばいい)(沖田隊長ぜひお願いします)。
「ちょ,ちょっと待ってください!副長!!」
「2キロ太った,って言ったよな?」
「うっ……言いましたけど」
「ちょうどいいじゃねェか。少しは肉ついてねーと抱き心地が悪ィ」
「だっ…!?」
さらりとなにを言ってるんですか,なにを!
「副長の変態!」
「なんとでも言え」
「鬼畜!スケコマシ!セクハラ親父!エロ親父!ハゲ予備軍!」
「誰がハゲ予備軍だ,こらァァァ!!!」
「きゃあああ!!!な,なんとでも言えって言ったくせに!ちょっ…どこ触ってんですか!」
「どこって…お前の,」
「やー!やー!!だ,誰か来て~~~~!!」
次のマヨポテチ・プレゼント企画の一等賞は『マヨ姫抱き枕』でした。
…でももう絶対応募なんてしません!