無意識の爆弾
風呂上りに一服吸って,まったりだらだらこいていたら。
いつの間に隣りにいたのか,はじっとこっちを凝視していた。
…マジでいつから居やがったんだ。戦闘要員でもねーのに侮れねェ奴だな。
「おい…なに見てんだ?」
「美味しいんですか,それ?」
は俺が咥えている煙管を興味深そうに見つめてきた。
ああ。何見てんのかと思ったら…煙管か。
どうりでガン見されているわりに目が合わねェわけだ。
「不味けりゃ吸わねェよ」
「ですよね」
うんうん,と納得したようにそいつは頷き,そして再度尋ねてきた。
「どうして煙草じゃなくて煙管なんですか?」
「ばーか。煙草と煙管じゃ味が全然違ェんだよ」
「そうなんですか?あの…良かったらちょっと貸してもらえます?」
「構わねェが…なんでだ」
「いいからいいから」
「??」
怪訝に思いつつ煙管を手渡すと,はあろうことかそれを咥えた。
「おい,やめとけ」
「大丈夫ですって!」
何を根拠に頷いてんだ。にこにこ笑いながら,すうっと深く息を吸い込んだ。次の瞬間,
「げほっ!!」
派手な声を上げて咳き込んだ――絶対ェこうなると思った。
俺はやれやれと溜息をつき,前かがみに丸まっている小さな背中をさすってやった。
「…だから言っただろうが」
「ううっ…苦しいし不味い」
「お前にゃ無理なんだよ」
「お,美味しそうだと思ったのに…」
涙目で咳をしつつ,は煙管をこっちに返してきた。
「もう当分それは見たくない」とでも言うように顔をしかめて。
でもちょっとすると咳はおさまり,真っ赤だった顔色もいくらか落ち着いてきたようだ。
それを見届けて,俺は再び煙管を自分の口に咥えた――のだが,
「あ。間接キスですね」
かっ…!?
「げぇほっ!!!」
「うわあ!?」
肺の底から吐き出した咳と,心の底から驚いた声とがハモッた。
つーか,こいつ…いいいい今!!!
「だ,大丈夫ですか?」
心配しきった顔で,俺の背中をさすってくる…これじゃさっきとは逆だな。
って,そんなことはどうでもいい!!
こいつ…普段すっとぼけたことばっか言うわ,するわのくせに…!
あっさり爆弾発言してくれやがって!!
い,いや間接キスなんぞで顔を赤らめる年齢でもキャラでもねェけどよ。
いきなり言われると…!!!
「し,晋助様?大丈夫ですか?」
「うるせェ!離れろ!あっちいけ!」
「な,なんですかその言い草は!人がせっかく心配してるのに!」
「お前が妙なこと言うからだろうが!」
「…え?何か言いました?」
「…(こいつマジで侮れねぇぇぇ!!!)」
『無意識』という名の爆弾を投下されうろたえる鬼兵隊頭領。