「愛情」と名付けるには 凶暴過ぎる
「慕情」と名付けるには 歪過ぎる
あなたは 澄んだ獰猛な光







雨が降っている。

獣の唸り声のような雷鳴が,時折黒い雲の向こう側から響いてくる。
秋の夜闇を切り裂くかのように,鋭い雨が舷窓に突き刺さるのを横目に見ながら,名前1はお茶に口をつけた。
それはレモンを一滴垂らせば青色から桃色へと変わる,魔法のようなお茶で,万斉から分けてもらったものだった。
マロウブルーの優しい味わいは,自室でひとり椅子にもたれる少女の身体を温めた。

(今夜で最後ね)

彼の曲作りに付き合うのも,
彼と素顔を晒した状態で会うのも,
彼と言葉を交わすのも。
10日目の今日が最後だ。

高杉以外の人間に顔を晒すのも,きっと最後になるだろう…このまま高杉の名前1に対する方針が変わらなければ。
『自分以外の人間に顔を晒させない』という高杉の方針が非常に奇異なものであることを,名前1は幼いながらも理解していた。
「普通」の親子や兄弟や恋人達はやらないし,やる理由もない。

しかし,高杉と自分には理由がある。
自分達が「普通ではない」からだ。

それでも,構わないと思う。
自分を地獄から救ってくれた高杉と共にもう一度地獄へと堕ちることになったとしても,構わない。
その気持ちに変わりはない。

(でも…)


――あれは『黙契』という曲でござる


もしも,あの男が奏でる美しい音楽が聞こえない場所に行くことになったとしたら,つらい。
名前1はそう思うようになっていた。

地獄にも,あの音楽は響いて来てくれるだろうか。


――名前1殿が何かしている間,拙者は名前1殿をただ見ている。

――いや…『聴いて』いるでござる


不思議なことを言う男だと思う。
でも,最初に彼に対して抱いた恐怖心は,割と早い段階で消えていたように思う。
今はもう彼を怖いとは思わなかった。むしろ…

(これは何という名の感情なのかしら?)

よくわからない。
よくわからないけれど,気が付けば万斉の『黙契』を口ずさんでいる自分がいた。
ここ最近,そういうことが増えた。

(そろそろ,あの人の所へ行く時間ね)

名前1は時計の針の位置を確認し,目を閉じてあの男の曲を小さく口ずさんだ。
雨の音がまた一層強くなった。

(『心の音』って,どんなものなのかしら?)



――黙した契り,と書くでござる。何も言わずとも互いの心が一致することを言う。






「…名前1」
「!」




稲光が白々と部屋中を照らし出し,一瞬にして光と影を分け暴いた。
続いて空間に亀裂を生じさせてしまうのではないかと思う程の雷鳴が響き渡り,少女の背を薙ぎ倒しそうになった。
いつもであれば,その声を聞いた途端,嬉しくて仕方なくなるのに,今は――身が竦んだ。

「…晋助にい様?」

名前1は振り返り,その声の主を瞳に映した。
今ここにいるはずがないと思っていた人物がいることに,恐ろしく肝が冷えた。

「いつ…いつ,お帰りになったの?」
「つい,さっきだ」
「…どうして,急に?」

いかにも顔色を伺うかのような焦った口調になってしまったことに,名前1は気が付かなかった。
彼女の言葉を聞いた高杉の右目の瞼が,ほんの少し震えたことにも。

「俺が急に帰って来たらなにかまずいのか」
「そんなことは…」

どもりそうになりながら,名前1は自分がまだ出迎えの言葉を高杉に言っていないことに思い当たり,慌てて頭を下げた。

「晋助にい様,おかえりなさいませ」
「…ああ」

高杉の茅で切ったように細く鋭い片目には,何の感情も浮かんでいない,否浮かんでいないように見えた。
それが余計に名前1の焦燥を煽った。
雨の打ちつける窓ガラスを目で示しながら,高杉は淡々と言葉を紡いだ。

「中止になった,今日の会合は。先方の艦がここまで辿り着けなくなった。季節はずれのこの嵐だからな」
「…そう」

突然の帰還の理由が,自分の行動が原因ではないと知っても,名前1は少しも安心することが出来なかった。
高杉の言葉,高杉の仕草のひとつひとつに肝を冷やしている自分がいた。
それは彼と出会ってからこれまでの年月の中で,決して有り得なかったことだった。
今はただ一つの言葉だけが,名前1の頭の中をぐるぐると繰り返し掻き回していた。

(ばれた…?)

――あの男との密会が。

「名前1」

高杉が一歩こちらへ足を踏み出した瞬間,テーブルに触れていた名前1の手がびくりと跳ねた。
その指の腹がティーソーサーを払い,冷たい床へとカップを突き落とした。

「あっ」

小さく叫んだのと,器の破砕音はどちらが先であったか。
重力にしたがって床に打ち付けられたカップは,取っ手のついていた側が大層派手に割れた。
名前1は反射的に屈み込んで砕けた破片を拾おうとしたが,

「痛っ…!」

予想以上に鋭利な割れ目は,少女の人差し指を無慈悲に裂いた。
小さな赤い泡が指先に膨れあがり,名前1は肉体的な痛みに顔を歪ませたが,今は精神的な痛みの方がより酷かった。
高杉の帰還を喜べない自分自身に吐き気がした。それどころか――

 あの人の作った『わたし』の曲を もう聞けない。
 あの人の音楽を わたしは もう聞けない。

それだけのことに,こんなにも胸が圧し潰されそうになっている。
こんなにも胸をかき乱されている。

「指を切ったのか,名前1?」

高杉は屈み込んで名前1と同じ目線になると,その小さな手をとって,血の滲む指先を自らの口に含んだ。
高杉の舌が自分の傷をなぞるのを感じると,名前1の目に自然と涙が浮かんだ。

「ごめんなさい,晋助にい様」
「名前1…」

俄かに傷を吸われた。
きつく 吸われた。



「さっき歌っていた曲――どこで聞いた?」



――誰から聞かされた?



雷光が一層強く輝いた。
白と黒を分かつように。
すべてを暴き晒すように。



(わたしにも聞こえたわ…心の音が)



それは とても哀しい音色をしていた。
獣の鳴き声のように。



+++++++++++++++++++++++++



「ご注文の品をお届けに参りました。河上殿」
「ああ。かたじけない」

テーブルを挟み向かい合って座るからくり技師は,万斉が数年前から懇意にしている確かな腕の持ち主だった。
彼から受け取った小箱の蓋を,万斉は慎重な手つきで開いた。
箱の中に鎮座している『それ』を丁寧に取り出し,ぜんまいを巻き上げ,自分が依頼した通りの働きをするかを確かめた。
やがて『それ』が思い描いていた以上の仕上がりであるのを認め,満足して笑った。

「さすが仕事が早いでござるな」
「いえ。他でもない河上殿のご注文ですからね」

依頼主からの賛辞に,からくり技師は誇らしげに胸を張った。それから自身の手元にある湯呑をとり,茶をすすりながら息をついた。

「それにしても最初は驚きました。貴方からこういった品の製作依頼があるとは思ってもみなかったので」
「そうでござるな。拙者も自分で驚いているところでござる」

鬼兵隊幹部の自分と懇意のからくり技師――つまり彼は戦闘兵器の開発・製造でよく世話になるからくり技師ということだ。
その彼に,こういった物の注文をする日が来るとは思ってもみなかった。
技師は気心の知れた微笑を浮かべて問いかけてきた。

「ひょっとして,いいひとへのプレゼントで?」
「…さてな」

万斉が曖昧に頷いてみせると,技師はすぐさま空気を読んでそれ以上は聞いて来なかった。かわりにテーブルに両手をついて,頭を下げてきた。

「またよろしくお願いします。では,次の機会に」
「うむ。かたじけない」

礼を述べながら,万斉も軽く頭を下げた。
からくり技師にこういう物を注文するのは――おそらくこれが最初で最後だろう。
次に彼に依頼をする時は,命を奪う機械を欲した時だろう…通常業務に戻る。それだけだ。
技師が去っていくのを見届けて,

「まあ…手渡すことはなかろうな」

手元に残った『それ』の表面を撫で,万斉は溜息をついた。
『それ』を彼女に渡す機会は,二度と巡っては来ないだろう。


――…素敵な曲。好きよ


最後の逢瀬になるはずだった夜,名前1は万斉の部屋に来ることが出来なかった。
季節はずれの嵐のせいで予定されていた会合が中止となり,高杉は早々に帰って来た。名前1が来られるはずもなかった。

(それに――もう晋助は知っている)

自分と名前1が高杉に隠れて会っていたことを。

夜嵐からちょうど1週間後の霜月の暮れ,名前1の十三参りが執り行われた。
その折に皆の見ている前で,名前1の包帯は解かれた――高杉の手によって。
解かれた白い包帯の下から現れた美貌に,その場にいた者達全員が息を呑んだ。肩上げの晴れ着に身を包んだ名前1は,この世のものとは
思えない程大層美しかった。既にその顔を見たことのある万斉でさえ,今一度彼女に見惚れた。
名前1は周囲からの強い視線にたじろぐ様子を一切見せなかった。顔を上げ,凛とした姿勢でもって視線を一身に受け止めていた。
参詣の後に祝いの宴が盛大に催され,高杉は当然のように名前1を自身の隣に座らせた。
そして――万斉に声をかけた。


  1曲弾け,万斉。曲は…そうだな


隣の少女を一瞬見,すぐに万斉へ視線を戻し,


  『黙契』を。弾け。


それだけでもう十分過ぎる程にわかった。
彼が すべて知っているということを。

(ばれたら,激昂されると思うていたが…)

高杉は名前1の包帯を皆の前で解くことで,万斉と彼女との間にあった『秘密』を無くさせた。
顔を見たことがあるのは,万斉だけではなくなったのだから。
あるいは万斉との密会の件が無くとも,元々こうするつもりだったのかもしれない。
隠されているものは,隠されているからこそ人を惹きつけてしまうものだ。
彼女がある程度大人になったら,自分で自分の身を守れる程に成長したら,披露するつもりだったのかもしれない。
隠さない方が安全なことも,この世には沢山ある。
なんにしろ――我が首領は大変に奥が深い。

(首が飛ばなくてよかったでござる)

今思い出しただけでも肝が冷える。万斉は深く息を吐き出し,すっかり冷めてしまった茶を喉に流し込んだ。

(渡せるはずはない…が)

高杉の命により皆の前で『黙契』を奏でる万斉を,あの少女はじっと見つめてきた。
海水に濡れた黒真珠の色をしたあの眼差しで。
万斉は名前1の方を見ることはせず,視線のかわりに音を彼女へと向けた。
目は高杉に向けたままで,万斉は宣言した。


  拙者が『黙契』を奏でるのは,これが最後でござる。


これが最後だと思った。
これが彼女に向かって音を奏でる最後の機会だと。
すべての想いを込めて,音を紡いだ。
そして――もう二度と この曲を弾くまい,と。

どうすることも出来ないのだと思う。これ以上立ち入っては,今度こそ後戻りが出来なくなる。だから,どうすることも出来ない。
そうと知りながらも,少女に『これ』を渡せないことを,心残りに思う。無念にさえ思う。
人づてではなく,直接手渡したい。
強く思えば思うほど思考は空回り,妙案は浮かばなかった。
結局鬱々としたまま時間が流れ――変化は師走の半ばに訪れた。




+++++++++++++++++++++++++




「こんばんは」
「…何故」

信じ難いという強い思いが,万斉の目を見開かせた。我が目を疑うとはこのことだ。からくり技師から品を受け取ったまさにその日の夜,
名前1は再び万斉の部屋を訪ねてきた。
きっと彼女自身も大きな決意と共に扉を叩いたのだろう,初めてこの部屋にやって来た時と同じように目元が強張っていた。

「…驚いたでござるな」

ただそう口にするだけで精一杯だった。素直に感想をもらすと,名前1の頬がぬるみ,悪戯を成功させたかのような笑顔を浮かべた。

「私も,自分で驚いているの」
「もう…来ることはないと思っていた」
「ええ。私も」

おそらく,本当にこれが最後だろう。

「でも,私の曲をまだ受け取っていなかったから。私を元にして作られた曲なのに,私自身が知らないだなんて,納得いかないわ。
 だから…」

だから 聞かせて。

「渡せないと思っていたでござる。だから…」

だから 嬉しい。

「今日は…ボディガードはついていないのでござるか」
「甲斐犬サクのこと?今日はいないわ。わたしだけ来たの」
「入るでござるよ。ちと…散らかっているが」

ソファの上に置いていた譜面やヘッドフォンを押しのけ,名前1が座るスペースを確保した。楽器で埋め尽くされた部屋の中央に座る
少女は,玩具箱の中の真新しい人形のようだった。真夜中の深い青の空気が,2人の間をひっそりと漂い流れていた。

「なにか飲み物を…」
「ごめんなさい…あまり時間が無いの」
「そうか…そうでござるな」

色を変えたマロウブルーにはしゃぐ名前1を見て,可愛らしいなと微笑んだ日が,急に遠い昔のことのように思えた。
万斉は感傷の糸をやんわり解くように頭を振り,渡すべき物を渡すことだけを考えるように努めた。

「ちょうど今日届いたばかりでござるよ」
「届くって…?私の曲が?どういうこと?」
「これでござるよ」
「これは…」

万斉から白い箱を手渡されると,名前1は少しも躊躇うことなくその蓋をすぐに開いた。本当に時間が無いのだろう。
箱の中に詰められた緩衝材をどかし,名前1の小さな手が『それ』を持ち上げるのを,万斉は魂が揺さぶられる思いで見届けた。

「これは…オルゴール?」

青色の磁器に虹色の貝殻で蝶々が描かれた螺鈿の箱は,少女の膝の上にしっくりと鎮座した。名前1はオルゴールの蓋を開いて,
ゼンマイに指をかけたところで万斉を見上げた。

「聞いても良い?」
「勿論」

万斉が笑って頷いてみせると,名前1も花が開くように笑った。
こういう一つ一つの彼女の仕草を,忘れないようにしようと内心で誓った。
もう二度とこの距離で,この空間で,彼女と語り合うことはないのだから。

ゼンマイを巻く音が止まって数秒後,それは流れ出した。

風に吹かれて花弁が舞い上がるように,音符が箱から飛揚した。
可愛らしい高音が,五線譜の波間を楽しそうに流れてゆく。
音が重なれば重なるほどに,透度が高くなってゆく。より一層,澄んでゆく。
でも,その無垢で無邪気なメロディは,どこか危うさや脆さを抱えている。
そして,少しばかりの残酷さも。
愛らしいのに,残酷で。無垢であるがゆえに,繊細で。鮮やかなのに,謎めいている。
この世に妖精達がいるとしたら,こういう風に囁き合うのかもしれない。

「綺麗な曲ね…でも…」

ぽつりと名前1が呟きをもらした。
オルゴールはまだ曲を奏で続けていて,音の群れは永遠のように静かな夜の中を軽やかに踊っていた。

「私,本当にこんなに綺麗な音,してる?」
「…しているでござるよ」

名前1と共に耳をすませていると,それがまるで知らない誰かの曲のように聞こえた。
この曲を創り上げたのは,万斉自身であるはずなのに。
この曲を纏っているのは,他でもない名前1であるのに。
こうしている間にも――

「名前1殿は,只そこにいるだけで 綺麗な音がする」



――彼女の音は こんなにも美しい。焦がれるほどに。



「…名前1殿?」

彼女の涙を隠してくれていた包帯は もう無い。
元々,一見すると泣いているかのように潤んだ眼の持ち主だが,今は本当に涙を流していた。
オルゴールの愛らしい音色の中で零れる名前1の涙は,まるで甘い蜜のように見えた。

「どうした?何故泣いている?」
「…わからないわ」

言いたくないのもしれないし,本当にわからないのかもしれない。
ただ,名前1は静かに首を横に振った。手の甲で何度か眦を拭うと,震える息で何度か深呼吸をした。
やがてソファから立ち上がると,名前1は万斉に深く頭を下げた。

「ありがとう,万斉さま」

初めて 名前を呼ばれた。
嬉しいはずなのに,途方も無い悲しみが押し寄せてきた。
2人の間に響くオルゴールの音が徐々にゆっくりになり,終わりへと近づいているのが嫌でも思い知らされた。

「私,晋助にい様が好きなの。この世のすべての人々の中で,晋助にい様のことが一番好き」

名前1の言葉には,一片の迷いも戸惑いもなかった。
誓うように言ったその唇が「でも」と続け,逡巡するように口が小さく開閉した。そして,




  この世のすべての音の中で,あなたの音楽が一番好きよ。




オルゴールの音が止まった。
余韻がほんの少しの間だけ続いたが,それも空気に溶け込んで散ってしまった。
人の記憶が,時の流れの中で静かに消えてゆくように。それでも,

「…これ以上無い賛辞でござるな」

たとえ消えたとしても,無かったことにはならない。
記録に残らなくても,記憶から失われても。
万斉の微笑に,名前1もまた儚げな笑みを返した。そして,

「ねえ。もう一度『黙契』を弾いてくれる?」
「もう一度…?」

一瞬,万斉は躊躇した。
万斉の中で,もうあの曲は『完結』していた。
十三参りの宴で高杉に命じられ,名前1のために奏でた『あの時』を,己の最後と定めていた。
「これが最後だ」と思って弾いたあの時を,最後としたかった。
たとえそれがどれほど甘美な「もう一度」だったとしても,やるせない「最後」を選ばなければならない時もある。選びたい時もある。
万斉の声の裏側にある躊躇いを探し出したかのように,名前1が目を見張った。夢から覚めた時のようだった。

「待って。やっぱり良いわ」

名前1は吹っ切るように目をぎゅっと瞑った。そして瞼を再び開いた時,少女の頬に浮かんでいるのは紛れもない笑顔だった。

「さようなら,万斉様」

大事そうにオルゴールを腕に抱え,名前1は胸元で掌を小さく振った。
また今度ね,とでも言葉が続きそうな程軽やかな別れの挨拶だったので,つられて,万斉も片手を上げた。

「さよなら」

また今度 など一生来ないということは 2人共わかっていたけれど。
なんということもない別れのように,2人は別れた。
名前1が万斉の部屋にいた時間は,時計の長針が一周もしない短い一時だった。
だが,永遠と思えるほどの時間だった。


「…また一曲書けそうでござる」


  ちと切ないバラードだが。


霧散してしまったオルゴールの余韻が,夜の空気を仄かに煌めかせていた。
その煌きを音に閉じ込めようと,万斉は五線紙を取り出し弦を弾いた。
もう二度と来ない時や想いも,音にすれば保管しておくことが出来る。
きっと できる。








あの日を最後に,もう二度と2人が言葉を交わすことはなかった。
時々偶然に見かけることはあっても,お互いに何も話をしなかった。
名前1は万斉を見ても,何も言わなかった。
万斉も名前1を見ても,何も言わなかった。



ただ 黙した契りがあるだけだった。




--------------------------fin.



2015/01/24 up...
m-tree様リクエスト「万斉でヒロインは『オルゴールの魂』を奏でる女の子。」でした。
2011年6月にリクエストをいただいて,完結するまでの間にほぼ4年の歳月が流れてしまいました。
筆が遅く,本当に申し訳なく思います。
でも4年間,この万斉とヒロイン,そして高杉のことを考えることが出来て,わたしは幸せでした。
お待たせしてしまい,ごめんなさい。この物語が,m-tree様の心になにか足跡を残せますように。
本当にありがとうございました。(by RICO)